長期金利0%誘導の日銀の金融政策発表まとめ

こんにちは。
ここ数日は世界中が注目する重大な発表で、経済界・金融界、各市場が右往左往して神経質な展開をしましたね。
20〜21日に開かれた日銀の金融政策決定会合の発表。
今回は今までの金融政策を包括的に検証して、今後の政策を決める非常に重要な位置付けのものでした。
市場では、量的緩和が拡大するのか、はたまたマイナス金利をさらに深堀りするのか、またETFやREITの買い付けをさらに拡大していくのか、もしくはまた現状維持でいくのか、非常にいろんな憶測が飛び交っていましたね。
その各市場の微妙な憶測によって、発表までは日銀の動きを待つ様子見の状態が続きました。
そして日銀から今回発表されたのは、量的緩和の拡大でもマイナス金利の深堀りでもなく、なんと長期金利を操作して0%に誘導するという『イールドカーブコントロール』と、物価上昇が安定的に2%を超えるまで資金供給拡大を継続する『オーバーシュート型コミットメント』というものでした。
これはどういう事なのでしょうか。
まず、今までの金融政策は『量的金融緩和』と『質的金融緩和』『マイナス金利』というものでデフレを脱却して年2%のインフレを起こそうとしてきました。
量的金融緩和は、日銀が年間80兆円の国債を購入する事で、国内の資金供給量を増やし、金利を下げるというもの。
また、この金融政策によって、為替は1$75円から一時的に大幅に125円台までの円安に誘導されましたが、その後また101円台(2016.9.24現在)に円高に推移という動きを見せたのですが、実はこの為替というのは本来は日銀の業務の管轄外です。
そして3兆円のETFの購入を年6兆円に拡大、そしてREITも拡大するという質的緩和。
それから更に、金融機関が日銀に預ける当座預金の金利をマイナスにするという過去にない異次元の政策。
これにより金利は低下したけど、金融機関の利益を圧迫するという副作用もありました。
そんな大きく3つの金融緩和を続けていたわけですが、今回の発表では、長期金利を操作して0%に誘導するというもの。
その0%に誘導するためには、年80兆円の国債購入の量にはこだわらないとの事。
要するにターゲットを量から金利へと移行させたのです。
これで金利の推移によって日銀は、テーパリングの様な事も堂々とやる事が可能になった訳です。
そして、この政策によって長期と短期の金利差を拡大しようという狙いです。
今までの黒田総裁率いる日銀の金融政策は、市場にインパクトが大きいサプライズを起こして、一気にデフレから年2%の物価上昇を起こそうというものでしたが、その結果、日本はデフレではなくなったが、今のところインフレにはなっていない状況。
今まで黒田総裁は量的緩和の拡大やマイナス金利、質的緩和と、あらゆる方法で市場にサプライズを起こして、流れを一気に変えようという狙いが有ったのですが、過去20年間もデフレの状態に沈んでいた日本国民が積極的に消費の拡大に向かうことは無かったわけです。企業も内部留保を増やしています。
こういった結果の流れで、日銀はインパクトの大きいサプライズによって短期的に市場を動かす事への限界に気が付いたのでしょう。
今回の長期金利の操作は、小手先のテクニックで短期的に一気に変えようとするのではなく、長期的な視野で長期金利を操作・誘導して、今までの国債購入も続けながら年2%の物価上昇に少しずつ誘導しようという方策の転換なのでしょう。
短期的な思考から長期的思考への移行ですね。金融機関への副作用にも配慮した政策への転換です。
年80兆円の量的緩和の限界が各市場で叫ばれる中、金利の誘導へとサラッと躱して移行したのです。
本来市場で決まる長期金利を日銀が操作するのは、通常珍しい事でなかなか難しい事なのですが、これで0%がキープされればその間の住宅ローンなどの金利もしばらく低く落ち着く事になるのではないでしょうか。
そしてその後、米国の連邦公開市場委員会(FOMC)の発表もあり、金利引き上げの見送りを発表しました。
これはほぼ市場の予想通りだったかと思いますが、為替は一時的に100円台まで円高になりました。(9/24時点では101円)
これからも年内に引き上げられると騒がれている米金利動向に世界中が注目していますし、日銀の金融政策と米金利動向からは目が離せません。
まあザッとここ数日の動きはこんな感じなのですが、やっぱり各国の金融政策で市場を牽引するだけでなく、中長期的に考えて実質的な経済が力強く着実に成長してほしいものです。
どう考えても金融政策だけでは限界がありますね。引き続きこれらの動向に注目していきます。
というわけで今日はここ数日注目だった金融政策のまとめについてでした。また次回をお楽しみに!!

伊藤 尚徳

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